──離職を“問題”ではなく“気づき”として捉える視点
経営をしていると、どんなに良いチームをつくっていても、必ず「人が辞める日」はやってきます。
そのたびに、心のどこかで寂しさや悔しさを感じるものです。
私自身も、過去に何度もこの感情と向き合ってきました。
「何が原因だったのか?」
「もっとできることがあったのではないか?」
そんな問いが頭をよぎるたびに、経営者としてのあり方が試されているような気持ちになります。
しかし最近では、「人が辞めること=悪いこと」と捉えるのではなく、一つのメッセージとして受け止めるようにしています。
人の離職は、経営にとっての“鏡”であり、組織にとっての“問い”でもあるのです。
離職の背景には、言葉にされない本音がある
退職時の面談では、多くのメンバーが「ポジティブな理由」を語ってくれます。
「やりたいことが見つかった」「家庭の事情」「別の挑戦がしたい」など、表面上は納得感のある理由が並びます。
しかし本当は、職場環境や評価、上司との関係性など、言いにくい「本音」があった可能性もゼロではありません。
それを言語化するのは難しいですし、退職を決めた時点で、すでに気持ちの距離ができていることも多いです。
だからこそ、その人が辞めることで何を学べるかを、チームとして、そして経営者自身として振り返る必要があると感じています。
「辞めること」は成長の一部
人が辞めるのは、必ずしも“組織の失敗”ではありません。
本人が次のステージに進むための「卒業」であることも多いですし、組織としての新陳代謝が必要なフェーズもあります。
むしろ、辞めることを過剰にネガティブに捉えてしまうと、チーム全体の空気が重くなってしまいます。
「辞めてはいけない雰囲気」ができてしまえば、それはそれで健全な組織運営とは言えません。
離職は、個人の成長と組織の変化が交差するタイミング。
その事実を冷静に受け止めることが、経営者にとっての大事なスタンスだと思っています。
離職から見直す3つのポイント
- 評価や制度にズレはなかったか?
評価制度やキャリアパスが本人の努力に見合っていなかった可能性があります。
特にスタートアップや成長企業では、制度が追いつかないケースも少なくありません。 - 日常のコミュニケーションにサインはなかったか?
表情が暗くなっていたり、発言が減っていたり。そうした小さな変化が、振り返ってみれば“予兆”だったこともあります。 - 採用の段階でミスマッチはなかったか?
そもそも求めていた人物像と、実際に採用した人の適性にギャップがあった可能性もあります。
離職をきっかけに、採用基準を再定義することも必要です。
「戻ってきたい」と思える組織へ
最後に、私が大事にしている考えがあります。
それは、「辞めた人が、また戻りたくなる組織であること」です。
一度辞めたとしても、「あのチームでまた働きたい」と思える場所であるかどうか。
それは、在籍中にどれだけ信頼関係を築けたか、どれだけ誠実に向き合ってきたかの結果です。
人が辞めるたびに、組織は見直しのチャンスを得る。
一人の決断が、組織をより良い形に進化させるきっかけにもなる。
だからこそ、辞める人に感謝をしながら、前を向いてチームを整えていく。
それが、経営者としての成長でもあると私は信じています。