──「誰でもいい」から「この人がいい」へ
組織を成長させるために避けて通れないのが、「採用」です。
人が増えれば業務の幅が広がり、できることが増えていく。そう信じて、これまで何人ものメンバーを迎え入れてきました。
しかし同時に、こうも思いました。
**「採用ほど、会社の未来を左右するものはない」**と。
どんなに素晴らしいサービスをつくっても、組織の空気を壊すような人が入ってしまえば、一瞬でチームは乱れます。
逆に、スキルや経験が多少足りなくても、「この人と一緒に働きたい」と思える人物に出会えれば、そこから新たな挑戦が始まることもあります。
だからこそ、私は「採用基準を明確にすること」が、経営者の大切な仕事だと考えています。
人手不足の焦りが“誤採用”を招く
採用活動をしていると、「とにかく人が欲しい」「早く戦力が必要だ」という焦りが出てきます。
この“焦り”が、採用基準をゆるめてしまう一番の原因です。
私も過去に、焦って採用を進めた結果、「価値観が合わない」「スピード感が違う」「報連相ができない」といった理由で、早期退職につながった経験があります。
採用に失敗すれば、教育コスト、引き継ぎ工数、チームのモチベーション低下など、目に見えないコストが想像以上に発生します。
だからこそ、**「採るかどうか迷ったら採らない」**という判断をすることも、時には必要です。
採用基準は「スキル」だけで決めない
スキルや経験ももちろん大事です。
特に即戦力が欲しいタイミングでは、職歴や実績に目がいきがちです。
でも、それだけで採用を決めてしまうと、後で組織とのズレが露呈してきます。
私たちが重視しているのは、次の3つの観点です。
- 価値観が合うか?
仕事に対する姿勢や、組織の考え方に共感しているかどうか。
「何をやるか」以上に、「なぜやるか」が共有できる人かを見ています。 - 再現性があるか?
過去に成果を出していても、それがたまたまの偶然ではなく、思考や行動の“型”として再現できる人かどうか。
これは面接時のエピソードや行動プロセスから判断しています。 - チームを前向きにする存在か?
一緒に働くメンバーに良い影響を与える人かどうか。
多少スキルが劣っていても、「この人がいるとチームが活性化する」と感じられる人は、必ず結果を出します。
採用は“選ぶ”だけでなく“選ばれる”活動
そしてもう一つ大事なのが、「こちらが選ぶだけではない」ということです。
今の時代、求職者の側も「どんな会社か」をしっかり見ています。
その中で、「選ばれる会社」であることが重要になってきています。
ですから、私たちは“採用基準”と同時に、“採用ブランディング”にも力を入れています。
どんな想いで事業をやっているのか。
どんな人と働きたいのか。
どんな未来を一緒に描けるのか。
これらを発信することで、単に応募を集めるだけでなく、「価値観の合う人」との出会いが増えてきたと実感しています。
採用基準は、会社の意思表示
採用基準とは、**「私たちはこういう組織でありたい」**という明確な意思表示です。
だからこそ、基準が曖昧なままでは、どこへ向かうのか分からなくなります。
採用を妥協すれば、組織は必ず歪みます。
一方で、基準を大切にして人を迎え入れると、そこには自然と“文化”が生まれます。
私は、スキルだけではなく、価値観やスタンスにこだわった採用を続けることで、組織の温度感が揃っていくことを実感しています。
焦らず、ブレずに。
「この人と働きたい」と心から思える人に出会うまで、採用は“根気強く向き合うべき仕事”だと、改めて感じています。