人に仕事を任せるようになってから、何度も自分に問いかけてきたことがあります。
それは、「これはフォローなのか、それとも口出しか」という問いです。
任せると決めたはずなのに、進捗が見えると気になってしまう。
自分ならこうするのに、と思ってしまう。
この感覚は、経営をしている方なら一度は経験があるのではないでしょうか。
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人に任せ始めた頃の僕は、正直まったく落ち着きませんでした。
進捗が遅いと感じれば不安になるし、
自分の想定と少し違う方向に進んでいると、つい口を出したくなる。
「それ、こうした方がよくない?」
「一回ここ確認しておこう」
「念のため、こっちも見ておいて」
一つひとつは、決して間違った指示ではありません。
むしろ、親切や責任感のつもりでした。
でも、ある時ふと気づいたんです。
これを繰り返していたら、
任せているようで、何も任せていない状態になっている、と。
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なぜ、任せたあとに口出ししたくなるのか。
理由は案外シンプルで、
自分がコントロールを手放しきれていないからだと思います。
失敗されたらどうしよう。
品質が落ちたらどうしよう。
クレームが来たら自分が責任を取る。
こうした不安が、無意識に口を動かしてしまう。
でも冷静に考えると、それは相手を信用していないというより、
自分が不安に耐えられていない状態でした。
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口出しを続けることで、相手の動きは少しずつ変わっていきました。
判断を仰ぐ回数が増え、
自分で決めなくなる。
失敗しないことを優先するようになる。
それを見て、
なぜ主体的に動いてくれないんだろう、と思ったこともあります。
でも今なら分かります。
主体性を奪っていたのは、僕の方だったということを。
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任せるというのは、
自分と同じやり方をしてもらうことではありません。
スピードも、順番も、考え方も、多少ズレていて当たり前です。
それでも、最終的に目指すゴールと
守るべき基準だけを共有していれば、
途中のプロセスは任せていい。
ここを理解するまでに、僕はかなり時間がかかりました。
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ある時から、あえて口を出さない期間をつくりました。
正直、怖かったです。
ヒヤヒヤする場面もありました。
でも、その先で見えた景色は、それまでとは違いました。
自分で考え、自分で判断し、自分で修正していく姿。
うまくいった時の達成感は、
僕が横から口を出していた時より、明らかに大きそうでした。
そして何より、
任せても大丈夫だという実感が、
僕自身の中に少しずつ積み上がっていきました。
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任せること自体は、実はスタート地点にすぎません。
本当に難しいのは、
任せたあとに、信じ続けることです。
途中で口を出さない。
結果が出るまで待つ。
失敗しても、すぐに取り上げない。
これは、スキルというより、覚悟の問題だと思います。
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任せたあとに口出ししたくなるのは、
経営者として自然な感情です。
だから、無理に抑え込む必要はありません。
ただ一度だけ、
今、口を出すことで何を守ろうとしているのか。
自分に問いかけてみてほしいと思います。
会社を守りたいのか。
相手を守りたいのか。
それとも、自分の不安を消したいだけなのか。
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任せて、待って、信じる経営は、
派手さはありませんし、即効性もありません。
でも、組織に静かな強さを残します。
僕はまだ、完璧にはできていません。
今でも、口出ししたくなる瞬間はあります。
それでも、この葛藤こそが、
経営が一人ごとからチームごとへ変わっていく過程なのだと思っています。