「最近、順調そうですね」
こう声をかけていただくことが増えると、
ありがたい反面、少し背筋が伸びる感覚があります。
もちろん、順調であること自体は悪いことではありません。
数字が伸び、相談が増え、
チームも少しずつ前に進んでいる実感がある。
ただ、僕自身の経験から言うと、
本当に気をつけなければいけないのは、調子がいい時です。
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過去を振り返ると、
大きな失敗は、だいたい「順調な時」に起きています。
忙しくなり、
任せる場面が増え、
「まあ大丈夫だろう」と判断する回数が増える。
ひとつひとつは小さな省略です。
確認を一回飛ばす。
共有を簡単に済ませる。
違和感に気づいても後回しにする。
その場では効率が上がったように見えます。
でも後から振り返ると、
だいたいその省略がトラブルにつながっていました。
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もうひとつ怖いのは、
自分の判断を疑わなくなることです。
うまくいっている時ほど、
今回もきっと大丈夫だろう、
今まで問題なかったから、
そう思ってしまう。
でも、環境は常に変わっています。
人も、状況も、規模も、
少しずつ、確実に変化しています。
過去の成功体験が、
そのまま次の正解になるとは限りません。
それを忘れた瞬間に、
足元は静かに崩れ始めます。
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足元を見るとは、止まることではありません。
仕組みは今の規模に合っているか。
無理をしている人はいないか。
感謝や共有が雑になっていないか。
こうした目立たない部分を、
一度きちんと見直すという意味です。
派手な打ち手よりも、
地味な確認の方が、
会社を長く支えてくれることは多い。
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調子がいい時ほど、
意識して人の表情を見るようにしています。
数字や結果は順調でも、
誰かが無理をしていないか。
言いたいことを飲み込んでいないか。
経営者が前だけを見ていると、
現場の小さな変化は見えなくなります。
だからこそ、
最近どう?
無理してない?
そんな一言を、
意識して増やすようにしています。
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長く続いている会社ほど、
静かな時間の使い方がうまいと感じます。
大きなトラブルが起きてから慌てるのではなく、
何も起きていない時に淡々と整えている。
その積み重ねが、
いざという時の強さにつながります。
調子がいい時ほど、
足元を見て、土台を固める。
遠回りに見えて、
一番の近道だと、今は思っています。
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経営者の仕事は、
問題が起きた時に対応することだけではありません。
問題が起きていない今を疑うこと。
これも大切な役割だと思っています。
調子がいい時ほど、
少しだけ立ち止まって、足元を見る。
それは不安だからではなく、
続けたいから。
僕はこれからも、
この感覚だけは忘れずにいたいと思います。