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第五十七回:社員の“自走力”を高めるには

最近、多くの経営者やマネージャーから「社員が指示待ちで困っている」「もっと自発的に動いてほしい」という声を聞きます。
確かに、社員が自ら考え、動ける組織は強いです。市場の変化に対応しやすくなり、リーダーの負担も大きく軽減されます。

では、「自走力」を高めるには、何をすれば良いのでしょうか?ただ「もっと主体的に動け」と言ったところで、状況は変わりません。

今回は、私が実践してきた中で見えてきた“社員が自ら動き出す組織づくり”の考え方と工夫について、お話しします。

そもそも「自走力」とは何か?

自走力とは、簡単に言えば「上司から言われなくても、自ら考えて行動できる力」です。
しかし、勘違いしてはいけないのは、「放っておいても勝手に育つ」という意味ではありません。
むしろ、適切な環境と関わりがなければ、自走力は育ちません。

人は誰しも、最初から自走できるわけではないのです。

だからこそ、自走力を育てたいのであれば、「育つ土壌」を整えることが、私たち経営者・リーダーの仕事なのです。

指示しすぎない。でも、放置しない

自走力を高めるための第一歩は、「指示しすぎないこと」です。

上司が何でもかんでも細かく指示してしまうと、部下は「考えなくてもいい」と学んでしまいます。「正解は上司が持っている」と思い込み、自分で判断する習慣がなくなってしまうのです。

とはいえ、完全に放置するのも逆効果です。「この人は自分に興味がない」と感じさせてしまえば、信頼関係も崩れてしまいます。

大切なのは、「問いかけること」です。

「あなたはどう思う?」
「なぜその選択をしたの?」
「もし自分がリーダーならどうする?」

こうした問いを投げかけることで、相手は自ら考え、言語化する力を鍛えることができます。答えを与えるのではなく、考える機会を与える。これが、自走力を育てるコミュニケーションです。

小さな成功体験が「自信」になる

人は、自分の判断や行動で「誰かの役に立てた」「成果が出た」と感じたとき、自信を持つようになります。この自信が、自走力の原動力になります。

ですから、自走力を育てるうえで欠かせないのが「小さな成功体験の設計」です。

難しすぎる目標を与えても、うまくいかなければ「やっぱり自分には無理だ」となってしまいます。逆に、「これなら自分でもやれそう」と思えるミッションを設定し、それがうまくいったときにしっかりと承認してあげることで、自信と挑戦意欲は育ちます。

私たちの会社では、入社間もないメンバーにも「自分の考えを提案してOK」「小さな改善を任せてみる」など、挑戦の機会を意図的につくっています。

自走力のある組織には「対話」がある

もうひとつ重要なのが、「日常的な対話」です。

会議だけでなく、ランチやオンライン面談、Slackなどのチャットでも、日常的に「気づき」「学び」「想い」を語り合える文化があると、自走力は育ちやすくなります。

対話があると、心理的安全性が高まります。「何を言っても大丈夫」「否定されない」という安心感があると、人はチャレンジできます。逆に、「間違ったら怒られる」「余計なことを言うな」という空気があると、自走どころか、指示待ちすら避けようとするようになります。

つまり、自走力の前提には、「安心して自分の意見を出せる環境」が必要なのです。

自走する社員が育つと、組織はどう変わるか?

社員が自ら動けるようになると、組織は確実に強くなります。

ひとつひとつの意思決定がスピーディーになり、現場での問題解決能力も上がります。何より、「自分でやっている」という感覚がある人は、モチベーションも高く、成長スピードも速くなります。

上司も、「管理する」から「伴走する」役割に変わっていきます。これにより、マネジメントの質も一段階上がっていくのです。

また、採用や人材定着の面でも大きなメリットがあります。自走力のある組織は、個々が輝ける環境として魅力的に映るため、自然と優秀な人材が集まりやすくなります。

終わりに

「社員が動いてくれない」のではなく、「動ける環境がないだけ」かもしれません。

自走力は、持って生まれた能力ではなく、育てられる力です。
そして、それを育てるのは、仕組みであり、関わり方であり、日々の言葉です。

自走する社員が育つと、組織は自動的に前に進み始めます。それは、経営者にとってこれ以上ない喜びでもあります。

これからの時代、自走力はますます重要になります。
共に“育てる文化”をつくり、持続可能な強い組織を目指していきましょう。

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