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第五十九回:「ありがとう」が飛び交う組織のつくり方

「うちの会社って、なんとなく空気が重い気がする」
「もっと明るく、前向きな職場にしたいけど、何から始めればいいのか分からない」

そんな悩みを抱える経営者やリーダーは少なくありません。私も、創業当初はとにかく売上や効率ばかりを気にしていて、組織の雰囲気にまで目を配れていなかった時期がありました。

しかし、あるとき気づいたのです。
「ありがとう」が自然に飛び交う会社は、驚くほど生産性も高く、離職率も低いということに。

今回は、私自身が実践してきた、「ありがとう」が文化になる組織づくりの方法と、その力についてお伝えします。

感謝の言葉は、最強のコミュニケーション

「ありがとう」とは、最もシンプルで、最も人を動かす言葉です。

誰かに感謝されると、嬉しくなります。
「自分の存在が役に立っている」と実感できます。
そして、もっと貢献したいと思えるようになります。

感謝の言葉は、相手を承認し、つながりを深め、信頼を生みます。
どんな高価な報酬よりも、心のエネルギーを与えてくれる魔法のような言葉。それが「ありがとう」です。

なぜ職場では感謝の言葉が減るのか

家庭や友人同士では自然に出てくる「ありがとう」も、職場になると急に言いづらくなる。それはなぜでしょうか?

一つは、「それが仕事だから」という意識です。
「やって当然」「業務の一環」と考えると、感謝の気持ちを表す必要性を感じなくなってしまうのです。

また、「照れくささ」や「上下関係」も大きな要因です。
部下が上司に言うのは簡単でも、上司が部下に「ありがとう」と言うのは、案外ハードルが高いものです。

しかし、感謝の言葉は立場に関係なく交わされてこそ、組織全体の空気を変える力を持ちます。

「ありがとう」は経営者が先に言う

「ありがとう」を文化にしたいなら、まず経営者が率先して言葉にすることです。

日々のやりとりの中で、些細なことでもいいのです。

「朝から元気に出社してくれてありがとう」
「提案をまとめてくれて助かりました」
「お客様から良い評価をいただいたのは、あなたの対応のおかげです」

こうした一言を重ねていくことで、「感謝を伝えていいんだ」「褒めていいんだ」という安心感が社内に広がっていきます。

そして、経営者が誰よりも自然に「ありがとう」を使えるようになると、それは確実に社風になります。

仕組みで“ありがとう”を可視化する

文化は、仕組みとセットで浸透していきます。
だからこそ、「ありがとう」が自然に生まれる仕掛けをつくることが大切です。

たとえば、私たちの会社では「サンクスカード」を導入しています。
小さなカードに、社員同士が感謝の気持ちを書いて渡す。それだけのシンプルな取り組みですが、「感謝を言葉にする習慣」が自然と根づいていきました。

また、月に一度、社内チャットで「ありがとう投稿の日」を設け、感謝したい人を紹介する仕組みもあります。
“見える化”された「ありがとう」は、他のメンバーにも良い影響を与えてくれるのです。

感謝が連鎖すると、組織は強くなる

感謝の言葉は、相手だけでなく、自分の心にも良い影響を与えます。
感謝を伝える人は、視野が広く、肯定的な思考になります。
「当たり前」を見過ごさず、「ありがたい」と感じる心が育ちます。

そして、それが組織に連鎖していくと、ポジティブな雰囲気が醸成されます。
お互いに思いやりを持ち、支え合い、失敗しても責めない風土ができていきます。

このような組織は、困難な時期にも粘り強く立ち向かえる「しなやかさ」を持っています。
感謝は、組織をやさしく、そして強くするのです。

「ありがとう」が溢れる組織を目指して

売上を追うことも、効率を上げることも、もちろん重要です。
しかし、どんなに戦略を練っても、「人」がバラバラでは組織は成長しません。

感謝の文化は、数字では測れない価値を生み出します。
それは、安心感であり、信頼であり、誇りです。

「ありがとう」が自然に飛び交う組織には、人が集まり、育ち、長く働いてくれます。
それは、経営者にとって最高の資産であり、未来への投資でもあるのです。

 

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