経営をしていると、ふとした瞬間に“孤独”を感じることがあります。
社内で相談できる相手がいない。
決断の責任を背負うのは、いつも自分。
嬉しいニュースも、悩みごとも、誰にどう話せばいいのか分からない。
経営者として表には出さなくても、心のどこかで「誰かに聞いてほしい」と思っている瞬間があるのではないでしょうか。
私自身も、何度も孤独に直面してきました。
今回は、そんな経営者の“孤独”とどう向き合い、どう乗り越えてきたのかをお話ししたいと思います。
孤独は「弱さ」ではなく「役割」
まず最初にお伝えしたいのは、孤独を感じることは“悪いこと”ではないということです。
むしろ、経営者という立場である以上、「誰にも相談できない瞬間」があるのは当然のことです。
それは、責任を持つ者にしか見えない景色であり、ある種の“役割”なのです。
社員やチームを守る立場にいる人は、悩みや不安をすべてそのまま伝えるわけにはいきません。
だからこそ、気づいたら心の中に“誰にも触れられない領域”ができてしまうのです。
でも、それは「あなたが弱いから」ではなく、「あなたが前に立ち続けている証拠」だと、私は思います。
孤独を放置すると、判断が鈍る
経営者の孤独が厄介なのは、それが知らぬ間に判断力を鈍らせることです。
誰にも相談できないまま、不安が心を支配すると、リスクを過剰に恐れたり、逆に根拠のない楽観にすがったりするようになります。
本来であれば客観的に判断できるはずのことが、感情に引っ張られてしまう。
これが、経営判断を大きく狂わせる原因になるのです。
だからこそ、孤独は「感じてもいい」けれど、「抱え込みすぎない」ことが大切なのです。
対処法① 経営者同士の“つながり”を持つ
私が孤独を感じたとき、最も救われたのは「経営者仲間の存在」でした。
同じように責任を背負い、苦悩を経験している人と話すと、不思議と心が軽くなります。
「悩んでいるのは自分だけじゃない」
「みんなも試行錯誤しながら進んでいる」
そんな安心感が、自分を前向きにしてくれました。
経営者同士の勉強会、異業種の交流会、小さなランチ会でも構いません。
“競争相手”ではなく、“共に頑張る仲間”としての関係性を築ける人が一人でもいると、経営者の視野はぐっと広がります。
対処法② 感情を“言語化”する
孤独の正体は、「自分の気持ちが分からなくなること」にあります。
「何が不安なのか?」
「どこにプレッシャーを感じているのか?」
これを、自分の中だけでぼんやりと抱えるのではなく、紙に書き出したり、誰かに話したりすることで、心が整理されていきます。
私は時折、誰にも見せない“感情ノート”を書いています。
愚痴も弱音も、誰かを羨ましいと思う気持ちも、すべて正直に書く。
そうすることで、「ああ、今の自分はこういう状態なんだ」と冷静に向き合えるようになるのです。
対処法③ 小さな“喜び”に目を向ける
孤独を感じているとき、人は「足りないもの」にばかり意識が向きます。
「自分には〇〇がない」「他の会社はもっと上手くいっている」
そんな思考に引っ張られてしまうのです。
だからこそ、あえて「今あるもの」「うまくいっていること」に目を向けるようにしています。
・社員が自発的に動いてくれた
・お客様から感謝のメールが届いた
・何事もなく今日が終わった
そんな小さな出来事に感謝できるとき、人の心は少しずつ回復していきます。
経営の成否に関わらず、“生きている”こと自体に感謝できる瞬間を、大切にしたいと思っています。
孤独は“強さ”をくれる
最後に、経営者にとっての孤独は、ある意味で“試練”でもあります。
しかし、それを乗り越えたとき、人は一段と強くなります。
自分を整えられるようになり、他人に優しくなれるようになり、組織を支える“本当のリーダー”へと変化していくのです。
私もまだまだ未熟ですが、孤独と向き合うたびに、「経営とは、自分を育てる旅でもある」と感じています。
だから、孤独を感じたときは、「成長のチャンスが来た」と思うようにしています。
そして、自分を責めるのではなく、少しだけ“いたわって”あげてください。